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ティーダ出版×若手作曲家・石原勇太郎氏によるコラム企画!
作編曲家・音楽学者と多方面から音楽を見つめる石原氏に
吹奏楽・アレンジ作品について魅力を語っていただく当コラム。
今回取り上げていただいた楽曲は、昨年原調版で出版された
チャイコフスキーの交響曲第5番第4楽章。
吹奏楽にアレンジされた楽譜に秘められたカギを、見つけていきましょう。



「ロシアの作曲家と言えば?」
と質問すれば、おそらく多くの方が「チャイコフスキー」と答えるのではないでしょうか。もちろんロシアには他にもたくさん素敵な作曲家がいるわけですが、たしかにチャイコフスキーはロシアを代表する作曲家のひとりであることは間違いありません。今回の「吹奏楽で聴くクラシック音楽」では、そんなチャイコフスキーの代表作、《交響曲第5番》の第4楽章を取り上げることにします。まずはチャイコフスキーという作曲家について、簡単にですがその生涯をたどってみることにしましょう。


チャイコフスキーについて
ピヨートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840 – 1893)はご存知の通りロシアの作曲家です。 小さな頃からピアノに触れ、音楽の才能を感じさせてはいたそうですが、チャイコフスキーのご両親は彼を音楽家にしようとは考えていなかったようです。驚くべきことに、チャイコフスキーは10歳で法律学校の寮に入れられ、その後長い間法律の勉強をしています。1859年チャイコフスキー19歳の年には法律学校を卒業し、日本で言う法務省の官僚として働き始めました。
さて、チャイコフスキーは歴史に名を残す才能の持ち主です。いわば少しだけわたしたちとは何かが違っていて、思いもよらない行動を起こします。官僚として働いていたチャイコフスキーは1861年から音楽を専門的に勉強し始め、23歳の時には法務省を辞任。その後音楽家としての道を歩んでゆくことになります。不思議なことにチャイコフスキーと同時代のロシアには、このように元々は違う職に従事していた(あるいは違う職を持つ)作曲家が多いです。ムソルグスキーやボロディンを含む「力強い一団(ロシア5人組)」の面々もそうです。
音楽家としての道を歩み始めたチャイコフスキー。モスクワの音楽院で先生を務めながら、オペラ、バレエ、交響曲...と様々なジャンルの作品を発表し、ロシア国内のみでなく、ヨーロッパ中にその名が知れ渡ってゆきます。そして1888年、ついに《交響曲第5番》に取り掛かります。


《交響曲第5番》と運命の歌
1888年に作曲された《交響曲第5番》は、チャイコフスキーにとって10年ぶりの交響曲です(《交響曲第4番》は1877年に作曲)。なぜそんなにも間が空いてしまったのでしょうか。理由のひとつにチャイコフスキーがすでに全ヨーロッパ的な作曲家になっていたこともあるかもしれません。人気作曲家チャイコフスキーは、演奏旅行等で多忙を極めていたのです。
それでもチャイコフスキーは新しい交響曲を作る意思はあったようで、チャイコフスキーの使っていたスケッチ帳(作曲のアイデアなどを書き留めるノートです)に、《第5番》で使われることになる旋律と共に「序奏、運命への絶対的な服従」、「慰め、一筋の光...いや希望はない」という言葉を書き残しています。そのためかはわかりませんが、第1楽章の最初に奏される暗く重々しい旋律は「運命の主題」と呼ばれ、《第5番》のすべての楽章に現れ、交響曲全体を統一しています(しかし、チャイコフスキー自身が何か明確に曲の標題=物語について語っているわけではありません)。
すべての楽章に現れる「運命の主題」は、現れる部分によって様々な表情を見せてくれます。今回取り上げる第4楽章ではどのような音楽になるのでしょうか。


鈴木栄一編曲版の第4楽章



さて、今回の《第5番》第4楽章の編曲者は鈴木栄一さんです。専攻であるクラリネットを故大橋幸夫氏に師事し、同時期に瑞穂吹奏楽団を設立されました。国立音楽大学卒業後はヤマハバンドディレクターとして全国各地のバンドの指導にあたられ、現在は札幌のアマチュア吹奏楽団の指揮者、編曲者として活躍されています。ティーダ出版からも《第5番》以外にも多くの編曲作品を出版しているので、ぜひご覧になってみてください。

この編曲もなかなか興味深い部分がありますので、いくつかご紹介したいと思います。


●移調なしの原調での編曲
この編曲の最も挑戦的な部分は、移調をせずに編曲されているということでしょう。
《第5番》はホ短調の交響曲。第4楽章は(ロシア人作曲家の交響曲に多く見られるように)同主長調のホ長調で書かれています。ホ長調...吹奏楽に親しんでいるみなさんは、あまり演奏したことのない調なのではないでしょうか?シャープが4つ、B管のクラリネットやトランペットではシャープが6つも調号に付くことになります。そのような曲を編曲する場合、多くは「移調」の処理をし、吹奏楽の編成で演奏しやすい調へと変更を行います。例えばホ長調であれば、半音上げてへ長調にするだけで、だいぶ演奏しやすくなるかもしれません。
しかし、調を変える(=移調する)というのは、実はよく考えて行わなければならないことなのです。「吹きやすい調にすることの何が悪いの?」と思う方もいるかもしれませんね。たしかに、声楽の世界では演奏者の声の音域にあった調に移調して歌うことが習慣となっていますし、演奏する際に調を変えることは、そんな考える必要のあることではない...というわけではないのです!吹奏楽やオーケストラのような器楽の世界では、場合によっては調が重要な働きをすることもあるのです。 チャイコフスキーの《第5番》の場合ホ短調から始まった曲が、様々な調を「運命の主題」と共に旅をしながら最終的にホ長調の華やかで力強い世界にやってくるのです。つまり、《第5番》の第4楽章におけるホ長調は、単にシャープが4つ付く調なのではなく、交響曲のそれまでの流れの到達点と言う意味も持っているのです。
第4楽章だけを演奏するのだとしても、それがわかって演奏するのと、わからないで演奏するのとでは大違いです。演奏はたしかに大変かもしれません。しかし、それは編曲者の鈴木さんや出版に携わったティーダ出版のみなさんも十分にわかっているのです。それでも、原曲と同じホ長調という調で編曲を行ったことの意味を考えてみると、第4楽章のみではなく自ずと《第5番》全体が持つ意味を見出すことができるかもしれません。
うーん、これも吹奏楽のために編曲したからこそ見えてくる《第5番》の良さに違いありません!


●弦楽器ではないのに...!?
鈴木版の《第5番》第4楽章のスコアを見てゆくと面白いことに気がつくのではないでしょうか。 例えば練習番号A(16小節目)のクラリネットセクション、サクソフォンセクションそしてユーフォニアムに括弧付きでpizz.という指示が書いてありますね。管楽器のみなさんは馴染みがないかもしれませんが、実はこれ、弦楽器にピッツィカートをするように指示するためのものなのです!ピッツィカートというのは弦を指で弾く奏法で、普段弓を使って弦を擦って音を出している弦楽器から軽やかな音を出すことができるのです(そのため、練習番号Aではコントラバスだけ括弧無しでpizz.の指示がありますね)。ピッツィカートが気になる方は、ヨハン・シュトラウス2世とヨーゼフ・シュトラウスの合作《ピッツィカート・ポルカ》という作品を聴いてみてください。
さて、鈴木版のお話しに戻りましょう。なぜ管楽器に弦楽器の奏法の指示があるのでしょうか。答えは簡単!原曲では弦楽器がピッツィカートで演奏しているためです。これは演奏する際にとても役に立つのではないでしょうか。スタッカートの指示で代用することもできたかもしれませんが、pizz.と書くことで、原曲の雰囲気も感じながら演奏することができるかもしれませんね。


●吹奏楽だからこそ際立つ音楽
《第5番》第4楽章は原曲もとても良い音楽です。華やかな木管楽器、力強い金管楽器とティンパニ、そして弦楽器が躍動して音が七色に輝くように響きます。
しかし、原曲のオーケストラでは気がつかない魅力や、もしかするとオーケストラよりも魅力的な響きを生み出せるような部分が鈴木版にはあります!(むしろ、そのような部分が無いのではこのコーナーの存続が危うい...)
挙げてゆけば切りがありませんが、まず練習番号M(210小節目)からの行進曲風のセクション。「行進曲風のセクション」と書きましたが、実はわたしは鈴木版を聴いて初めてそのように思ったのです。今までは特に意識せずに次の部分へと移るための楽句だと思っていたのですが、鈴木版を聴いて、スコアを読んでみるとこれは明らかに行進曲を意識した音楽であることに気がつかされます。展開部がはじまってすぐに現れるこの行進曲がどのような意味を持つのかは、みなさんが演奏したり聴いたりして考えてみてください。ともかくも、行進曲という様式がとても合う吹奏楽だからこそ、この部分の表現が際立つことは間違いありません!
そしてコラール風の旋律が多いことも、《第5番》第4楽章の特徴のひとつです。例えば練習番号Cの直前43小節目からや展開部の終わり270小節目以降など、力強いものや、やわらかなものなど様々なコラール風の音楽が現れます。これもまた吹奏楽という管楽合奏が生み出す響きが、この音楽の魅力を何倍にもするのではないでしょうか。そして第4楽章は、そのようなコラール風の音楽とAllegro vivace(58小節目)のような前へ前へと音楽を駆り立てるエネルギーの対比が、実に見事な音楽でもあります。吹奏楽はこのような対比の音楽にとても向いているので、オーケストラとは違った魅力を《第5番》第4楽章から引き出すことができているのです。


さて、鈴木版《第5番》第4楽章を聴いて(演奏して)みていかがでしたか? 冒頭から穏やかに流れる「運命の主題」が、第4楽章の中でも時折現れては様々な表情を見せてゆくことがわかったのではないでしょうか? 《第5番》の中で鳴り響く運命の歌...もし鈴木版第4楽章でこの音楽に魅了された方は、ぜひ第1楽章から聴いてみてください。「運命の主題」を中心に形作られる《第5番》の音楽は本当に美しく、感動的です。 吹奏楽で交響曲のひとつの楽章のみを抜粋して演奏する際には、もしかすると最初から原曲のすべての楽章を聴いてから演奏に挑むという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ともかくも演奏をしてみてから原曲のすべての楽章を聴いてみると、また違った発見があることもあれば、新しい魅力に気がつくこともあるかもしれません。 吹奏楽だからこそ可能となるクラシック音楽との出会いを大切にしてみてくださいね!




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